店のことを書いても意味がないと思った

患者の少ない新規薬局で情報発信について考える57歳の薬剤師 ChatGPT活用
新店舗の宣伝ではなく、患者さんが来局前に知りたいことを書こうと考え始めました。

「57歳薬剤師がAIで作る側になるまでの記録」第3話

前回は、体重が90kg近くまで増え、膝の痛みをきっかけにChatGPTへ相談するようになった話を書きました。

それまでの私は、ChatGPTに食材の使い方や料理、食事について聞くことが中心でした。

ところが2026年4月、新店舗へ異動したことで、ChatGPTとの付き合い方が少しずつ変わり始めます。

きっかけは、患者さんが来ないことでした。

新しく開院した病院の前に、新しくオープンした薬局。

普通に考えれば、病院が開けば患者さんが来て、その処方箋を持って薬局にも来てくれると思います。

しかし、現実はそれほど簡単ではありませんでした。


想像以上に厳しかった新店舗のスタート

私が異動した店舗は、病院も薬局も新規でした。

駅から徒歩15分ほど離れた住宅街にあり、駅前を歩いていれば自然に目に入るような場所ではありません。

さらに、薬局には外看板がありませんでした。

Googleビジネスプロフィール、いわゆるGBPもありません。

会社のホームページも、新店舗を知ってもらうための入口としては十分とはいえない状態でした。

そもそも、そこに病院と薬局ができたこと自体を知らない人が多かったのだと思います。

病院が新規なら、当然ながら、最初から大勢の患者さんがいるわけではありません。

その病院の患者さんが少なければ、薬局へ来る患者さんも少なくなります。

病院も新規。

薬局も新規。

場所も分かりにくい。

ネット上にも、ほとんど情報がない。

いくつもの厳しい条件が重なっていました。

患者さんを待つ時間が長い日もありました。

「このまま待っているだけで、本当に患者さんは増えるのだろうか」

私は、何かできることはないかと考えるようになりました。


発信したくても書くことがなかった

まず思いついたのは、薬局について発信することでした。

しかし、新店舗には紹介できるものがほとんどありません。

長年地域で営業してきた歴史はありません。

これまでの実績もありません。

患者さんから寄せられた声もありません。

「地域の皆さまに寄り添います」

「丁寧な対応を心がけています」

そのようなことは書けます。

ただ、それだけの記事を読んで、わざわざ薬局へ来てくれる人がいるのだろうかと思いました。

まだ店名すら知られていない段階で、店の理念や特徴だけを書いても、そもそも検索されません。

新しい薬局ができました。

ぜひご利用ください。

それだけでは、発信する側が言いたいことを並べているだけです。

そこで私は、こう思いました。

店のことを書いても意味がないのではないか。

正確には、店のことだけを書いても、今の段階では意味が薄いということです。

では、何を書けばいいのか。

そこで思い出したのが、以前やっていた通販の仕事でした。


通販時代の経験を思い出した

実は以前、約16年間通販業をやっていました。

その経験から、「自分が伝えたいこと」と「相手が知りたいこと」は違うと分かっていました。

商品の良さを一方的に並べても、思ったほど反応はありません。むしろ、購入前に感じる疑問や不安に答えた方が、商品に興味を持ってもらえました。

通販時代には、「買わないでください」という商品キャッチを書いたこともあります。

その言葉を見れば、

「どういうことだろう?」

と気になります。

そこで、商品が向いていない人や、買う前に知っておいてほしいことを書く。売り手が伝えたいことより、買う人が気になっていることを先に出す方が、反応は良かったのです。

それを思い出し、新店舗でも薬局の宣伝を書くのではなく、患者さんが来局前に検索しそうなことを書こうと思いました。


患者さんが検索する言葉を考えて記事を書き始めた

そこで私は、ChatGPTと相談しながら「来局前の不安解消シリーズ」を書き始めました。

初めて薬局へ行くときは、何を持っていけばいいのか。お薬手帳を忘れても薬を受け取れるのか。処方箋には有効期限があるのか。

薬剤師にとっては当たり前のことでも、患者さんにとっては分からないことがたくさんあります。

店の紹介を繰り返すよりも、患者さんが来局前に検索しそうな疑問へ答える方が、薬局を知ってもらうきっかけになるのではないかと考えました。

一方、当時の店舗は患者さんが少なく、待ち時間もほとんどありませんでした。

その状況を逆手に取り、「暇」をネタにしたショート動画まで作っていました。

今思えば、この頃からずっと「薬局の待ち時間」について考えていたのかもしれません。

記事を書くときは、内容だけでなく、患者さんがどのような言葉で検索するかも意識していました。

例えば、薬局は武蔵小杉駅から徒歩15分以上離れていましたが、記事の中では「武蔵小杉エリア」と書いていました。

駅前の薬局ではなくても、周辺で病院や薬局を探す人は、「武蔵小杉」という地名で検索する可能性があります。

患者さんの疑問に答えながら、地域名も不自然にならない範囲で入れる。ChatGPTと相談しながら、検索で見つけてもらうことまで考えて書いていました。

店が伝えたいことではなく、患者さんが知りたいことを書く。

さらに、患者さんが実際に使いそうな言葉で記事を作る。

この頃には、すでに患者目線とSEOを組み合わせた発信を始めていました。

当時、実際に書いていた記事は、薬局のアメブロに現在も残っています。
→「来局前の不安解消シリーズ」を見る


この頃からChatGPTとの付き合い方も変わり始めた

それまでのChatGPTは、主に食材や料理、食事について相談する相手でした。

前回書いたように、体重や膝の痛みについて相談することも増えていました。

しかし、新店舗で発信について考えるようになってから、相談する内容が仕事にも広がっていきました。

患者さんは、どのようなことで不安になるのか。

この内容は、初めて薬局へ行く人にも伝わるのか。

専門用語を使わずに説明するには、どう書けばいいのか。

自分一人で考えているだけでは、薬剤師側の視点に偏ってしまいます。

そこでChatGPTとの会話を通して、別の見方がないかを考えるようになりました。

何もないところから、AIにすべてを作ってもらったわけではありません。

新店舗で患者さんが少ないという現実があり、通販時代の経験があり、自分なりに考えたことがありました。

ChatGPTは、それらを整理し、別の角度から見直すための相談相手になっていきました。

この頃から、私はChatGPTを単に質問へ答えてもらうためだけではなく、自分の中にある考えを言葉にするためにも使い始めたのだと思います。

「新店舗の宣伝を書こうとして、店のことを書いても意味がないと思った。そして、患者さんが知りたいことを書くようになった。」

この小さな方向転換が、後のアメブロやブログ運営、さらにAIを使って何かを作ることへとつながっていきます。

ただ、この時点ではまだ、自分がAIツールを作る側になるとは、まったく考えていませんでした。

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