95歳の母は電話を使えない。それでも母専用の株価確認ツールは使えた

スマートフォン操作が難しい95歳の母が専用の株価確認ツールを使っている様子 個人開発記録
電話の操作も難しい95歳の母が使えるよう、必要な情報だけに絞って作った株価確認ツール

95歳の母は、現在もスマートフォンで電話をかけたり、かかってきた電話に出たりすることが十分にできません。

それでも、母のために作った「かんたん株価確認ツール」だけは、何度か使い方を説明した結果、自分で何とか操作できるようになりました。

母がスマートフォンそのものを使えるようになったわけではありません。使えるようになったのは、保有している株の現在価格を確認するという、母の目的だけに合わせて作った小さなツールです。

なぜ、電話のような基本的な操作は難しいままなのに、このツールは使えるようになったのか。

振り返ってみると、違いは母の能力ではなく、画面に表示される情報の量や、目的へたどり着くまでの操作手順にもあったのではないかと思います。

この記事では、95歳の母のために「かんたん株価確認ツール」を思いつき、試作品を作り、実際に使ってもらいながら改善していった過程を振り返ります。

実際に作成したツールは、こちらの「かんたん株価確認ツール」から確認できます。

入院をきっかけに母専用のスマートフォンを買った

母専用のスマートフォンを購入したきっかけは、母の入院でした。

入院中に家族と連絡を取ったり、必要なときに電話を使ったりできれば便利だと考えたためです。

ただ、実際には思うようにはいきませんでした。

母は現在も、スマートフォンで電話をかける、電話に出るといった一般的な操作を十分には使いこなせていません。

電話のアイコンを押せばよい、着信画面が表示されたら決められた場所を操作すればよいと説明しても、それを毎回同じように行うことは簡単ではありませんでした。

スマートフォンには、画面の切り替えや通知、戻る操作、押す場所の違いなど、使い慣れている人にとっては意識しない操作が数多くあります。

一つひとつは単純に見えても、それらが連続すると、母にとっては難しい操作になります。

そのため、母にスマートフォンを渡したからといって、すぐに連絡手段として自由に使えるようになったわけではありませんでした。

株価を見たいだけなのに、どこを見ればよいか分からなかった

母には、毎日続けている習慣があります。

自分が保有している株の価格を確認し、その数字をノートへ書くことです。

母は字を書くことが苦手なわけではありません。むしろ、私よりもかなりきれいな字を書きます。

保有している銘柄についても母自身が把握しており、4桁の銘柄コードも分かっています。

つまり、株式そのものが分からないわけではありません。

問題は、スマートフォンの画面上で目的の株価を探し、その数字へたどり着くまでの操作でした。

株価を確認するだけなら、既存の金融情報サイトを利用すれば十分だと、最初は私も考えていました。

そこで、Yahoo!ファイナンスの見方を何度か説明しました。

しかし、母から返ってきたのは「分からない」という言葉でした。

Yahoo!ファイナンスのような金融情報サイトには、株価だけでなく、チャート、ニュース、指数、ランキング、企業情報、広告、そのほかの金融情報が表示されています。

株式について詳しく調べたい人にとっては、どれも便利な情報です。

ただ、母の目的は違います。

母が知りたいのは、保有している株の現在価格を確認し、その数字をノートへ書くことだけでした。

必要な数字を見る前に多くの情報が表示されると、どの場所を見ればよいのか、何を押せばよいのかを判断しなければなりません。

母にとっては、その判断自体が負担になっていたのではないかと考えました。

Yahoo!ファイナンスが使いにくいという話ではありません。

幅広い利用者を対象に、多くの情報を提供するサービスとしては自然な画面です。

ただし、母の目的に対しては、情報が多すぎたのです。

必要な情報以外を消したツールを作ることにした

そこで私は、新しい機能を増やすのではなく、必要のない情報をすべて消した画面を作ればよいのではないかと考えました。

最初に決めた仕様は、非常に単純なものでした。

4桁の銘柄コードを入力すると、銘柄名、現在株価、前日比が表示される。

それだけです。

反対に、表示しない情報も最初から決めました。

チャート、日経平均、TOPIX、ニュース、出来高、PER、PBR、ランキング、為替などは表示しません。

一般的な株価サイトでは重要な情報であっても、母が毎日の記録に使わないものは、画面に置かない方針にしました。

目指したのは、株式情報を詳しく分析できるツールではありません。

銘柄コードを入力し、表示された数字をノートへ書く。

その目的だけを達成できる画面です。

機能を考えるというより、母が迷う可能性のあるものを一つずつ取り除く作業に近かったと思います。

最初の方法では日本株を表示できなかった

仕様を考えた後、AIと相談しながら内容を整理し、実装にはCodexを使いました。

AIやCodexを使うことで、試作品を作る速度は以前よりも明らかに上がっています。

ただし、指示を出せば最初から思いどおりに動くものが完成するわけではありません。

最初に試した株価データの取得方法では、日本株をうまく表示できませんでした。

銘柄コードの扱いなどを変更しながら試しましたが、母が保有している日本株の現在株価を安定して表示するという目的を達成できませんでした。

そこで、その方法に固執するのをやめました。

細かな修正を繰り返せば使えるようになる可能性はあったかもしれません。しかし、今回の目的は特定の方法を使い続けることではなく、母が株価を確認できる画面を作ることです。

早い段階で方針を変え、別の取得方法へ切り替えました。

その結果、日本株の現在株価と前日比を表示できるようになりました。

開発を始めると、最初に選んだ方法を何とか成功させたくなることがあります。

しかし、方法を守ることが目的になってしまうと、本来の目的から離れてしまいます。

今回については、最初の失敗を引きずらず、別の方法へ切り替えたことが、その後の改善につながりました。

株価が表示できてから、本当の改善が始まった

日本株の株価と前日比が画面へ表示された時点で、プログラムとしては一応動く状態になりました。

ただし、母が使える道具としては、まだ完成ではありませんでした。

最初に表示された銘柄名は英語でした。

海外向けの正式な会社名が表示されても、母が普段使っている日本語の銘柄名とは一致しません。

データとして間違っていなくても、母にとって分かりにくければ意味がありません。

そこで、日本語の銘柄名を優先して表示するように修正しました。

このとき、「データを取得できること」と「利用者が理解できること」は別の問題だと改めて感じました。

プログラムが正常に動いていても、表示の仕方が利用者に合っていなければ、実用品にはなりません。

その後も、実際に画面を触ることで、細かな問題が次々に見つかりました。

最初は「株価を見る」ボタンを押すと、結果がページの下部へ表示される仕組みでした。

ところが、ボタンを押した後も画面は入力欄付近に残ります。

結果そのものは表示されていても、利用者から見ると、何も起きていないように感じます。

そこで、検索後は結果カードの位置まで画面が自動で移動するようにしました。

次に問題になったのは、別の銘柄を調べるときです。

結果を確認した後、再び銘柄コードを入力するためには、画面を上まで戻さなければなりません。

スマートフォンで何度も上方向へ動かすのは面倒です。

そのため、結果カードの下に「銘柄コードの入力に戻る」ボタンを追加しました。

ボタンを押すと、入力欄の位置へ戻る仕組みです。

入力例の見せ方も変更しました。

最初は、複数の銘柄コード例を大きな枠で表示していました。

分かりやすくするために置いたつもりでしたが、その枠が入力欄を下へ押し下げ、スマートフォンでは画面全体が縦に長くなっていました。

説明を増やしたことで、肝心の入力場所へたどり着きにくくなっていたのです。

そこで大きな例示欄は削除し、銘柄コードの入力欄内に「例:9432」と表示するだけにしました。

結果表示もコンパクトにしました。

最初は「現在株価」というラベルの下に数字を表示する2段構成でしたが、縦に長くなるため、1行表示へ変更しました。

たとえば、次のように表示します。

「現在株価 2,836円(-106円)」

購入価格、持ち株数、評価差額についても同じように横並びにし、結果カード全体を短くしました。

さらに、重複していた説明も削りました。

前日比の数字を表示しているにもかかわらず、その下に「上がっています」「下がっています」「ほぼ変わりません」といった文章や絵文字も表示していた時期があります。

しかし、数字を見れば分かる内容を別の文章でも繰り返すと、情報量が増えます。

そこで説明文と絵文字を削除し、現在株価の横に前日比を括弧付きで表示する形へまとめました。

分かりやすくするために追加したものが、必ずしも分かりやすさにつながるとは限りません。

むしろ、表示を減らしたことで、見る場所が明確になりました。

母に聞いたら、購入価格と持ち株数も必要だった

当初、私は現在株価と前日比だけを表示すれば十分だと考えていました。

母が毎日ノートへ株価を書いていることは知っていたため、その作業に必要な数字だけを見せればよいと思ったのです。

しかし、実際に母へ聞いてみると、私の想定とは違いました。

母が知りたかったのは、現在株価と前日比だけではありませんでした。

購入価格、持ち株数、そして現在株価との差額も確認したいということでした。

そこで、購入価格と持ち株数の入力欄を追加し、現在株価との差から評価差額を表示できるようにしました。

ただし、ここで入力項目を必須にすると、最初に目指したシンプルさが失われます。

毎回、銘柄コード、購入価格、持ち株数のすべてを入力しなければ株価を見られないのでは、単純な確認ツールとは言いにくくなります。

そのため、購入価格と持ち株数は任意入力にしました。

銘柄コードだけを入力した場合は、銘柄名、現在株価、前日比だけを表示します。

購入価格と持ち株数も入力した場合は、それらに加えて評価差額を表示します。

評価差額は、現在株価と購入価格の差に持ち株数を掛ける考え方です。

この変更によって、簡単に株価だけを確認したい場合と、保有状況まで確認したい場合の両方に対応できるようになりました。

私だけで仕様を考えていたら、購入価格と持ち株数は追加していなかったと思います。

実際に使う本人へ聞かなければ、本当に必要な機能は分かりませんでした。

ツール画面と説明文を分けた

機能を追加した一方で、ツールの画面そのものには、できるだけ説明を増やさないようにしました。

注意書きや対応範囲を入力画面へ並べると、せっかくコンパクトにした画面が再び長くなってしまいます。

そこで、操作に必要な情報だけをツール内へ残し、対応範囲などの説明はページ本文へ分けました。

このツールが対象としているのは、4桁の日本株個別銘柄コードです。

日経平均株価、TOPIX、米国株、為替、仮想通貨、投資信託、そのほかの指数には対応していません。

こうした説明は必要ですが、母が毎回操作するときに見る必要はありません。

そのため、入力画面には置かず、ページ本文で説明する形にしました。

画面を簡潔に保つことと、必要な説明を省略しないことは、両立させる必要があります。

すべてを一つの場所へ詰め込むのではなく、操作する場所と説明を読む場所を分けることで、ツール画面の使いやすさを保てました。

画面を簡単にしても、教えることは簡単ではなかった

ツールの改善が進んだ後は、母へ操作方法を教える必要がありました。

ここでも、想像していたほど簡単には進みませんでした。

母は字を書くことが苦手ではありません。

私よりもかなりきれいな字を書きます。

そのため、操作手順を私が印刷して渡すだけではなく、母自身に紙へ書いてもらうことにしました。

画面に表示されている言葉と、操作する順番を自分の手で書けば、少しでも内容を理解しやすくなるのではないかと考えたためです。

私は「省略しないで、そのまま書いて」と伝えました。

しかし、母は自分の判断で一部の言葉や手順を省略してしまうことがありました。

字が書けないわけではありません。

問題は、目の前の操作をどの順番で理解し、どの情報を重要だと判断するかという部分でした。

私にとっては、省略すると意味が変わる言葉でも、母にとっては書かなくてもよい情報に見えることがあります。

その結果、後で手順を見返したときに、どこを押すのか分からなくなる可能性があります。

画面を簡単にすれば、それだけで使えるようになるわけではありません。

教え方についても、利用者がどのように理解し、どこを省略し、どこで迷うのかを見ながら調整する必要があります。

ツールを作る作業とは別に、使い方を伝える難しさがありました。

電話は使えなくても、このツールは使えるようになった

何度か操作方法を説明した結果、母は「かんたん株価確認ツール」を自分で何とか使えるようになりました。

現在も、スマートフォンで電話をかける、電話に出るといった一般的な操作は十分には使いこなせていません。

その状態は変わっていません。

それでも、母の目的だけに合わせて作ったこのツールについては、銘柄コードを入力し、表示された株価を確認するところまで操作できています。

この違いは大きいと感じました。

高機能であることと、使いやすいことは同じではありません。

多くの人に対応するために機能や選択肢を増やすと、それだけ判断する場面も増えます。

利用者の目的が一つなら、画面と操作も一つへ近づけた方が使いやすくなる場合があります。

今回のツールでは、銘柄コードを入力し、ボタンを押し、表示された数字を見る。

基本的な流れはそれだけです。

母が一般的なスマートフォン操作を苦手としているからといって、すべてを母の能力不足として片付けるのは違うのではないかと思いました。

利用者が操作できないときには、道具側の情報量や操作手順にも見直せる部分があります。

もちろん、画面を簡単にすれば誰でも必ず使えるようになるわけではありません。

それでも、利用者が迷う場所を減らすことで、目的を達成できる可能性は高くなります。

母がこのツールを使えるようになったのは、機能を増やしたからではなく、必要なもの以外を減らし、実際の使い方に合わせて直していった結果でした。

現在公開している「かんたん株価確認ツール」は、母が迷いやすかった部分を一つずつ見直した現在の形です。

簡単なツールほど、実際に触って初めて改善点が見える

このツールは、最初から現在の形を思いついたわけではありません。

最初に考えていたのは、銘柄コードを入力すると、現在株価と前日比が表示されるだけの画面でした。

しかし、試作品を自分で触ると、検索後に結果が見えないことや、次の入力へ戻りにくいことに気づきました。

母へ見せると、日本語の銘柄名が必要であることや、購入価格と持ち株数も確認したいことが分かりました。

画面を短くするために入力例を削り、結果を1行表示へ変更し、重複した説明も削りました。

操作方法を教える段階では、画面だけではなく、手順の伝え方にも改善が必要だと分かりました。

振り返ると、開発は次の流れを繰り返していました。

思いついたものを試作品にし、自分で触り、母へ見せ、必要なことを聞き、不要なものを削り、迷う場所を直し、もう一度使ってもらう。

非常に単純なツールですが、単純だからこそ、一つの余計な表示や一回の余分な操作が目立ちます。

作る側が問題ないと思っている画面でも、使う側には動いていないように見えることがあります。

分かりやすいと思って追加した説明が、画面を長くし、入力欄を見つけにくくすることもあります。

実際に利用者へ使ってもらわなければ、こうした問題には気づけませんでした。

AIやCodexによって、試作品を作り、修正を反映する速度は上がりました。

一方で、何を作るのか、何を表示しないのか、利用者がどこで迷っているのかを考える役割は、人間側に残っています。

AIがコードを出力できても、母が画面を見たときに何を感じるかまでは、自動的には分かりません。

その部分は、実際に使ってもらい、反応を見ながら直していく必要がありました。

まとめ

「かんたん株価確認ツール」は、95歳の母が毎日株価をノートへ書くときに、目的の数字へたどり着けないという小さな困りごとから始まりました。

最初は、銘柄コードを入力すると、現在株価と前日比だけが表示されるツールを作る予定でした。

しかし、実際に作って触ってみると、結果の表示位置や画面の長さ、銘柄名の表示方法など、さまざまな問題が見つかりました。

母へ聞いたことで、購入価格、持ち株数、評価差額も必要だと分かりました。

一方で、それらを必須にすると使いにくくなるため、任意入力にしました。

必要な機能を追加するだけでなく、入力例や重複した説明を削り、操作画面と説明文も分けました。

AIとCodexによって、試作品を動く形にする速度は上がりました。

ただし、利用者の目的を聞き、どこで迷っているのかを見つけ、何を追加し、何を削るのかを判断するのは人間の役割でした。

母は今も、スマートフォンで電話をかけたり、電話に出たりする操作を十分には使いこなせていません。

それでも、母の目的だけに合わせて作ったこの株価確認ツールは、何度か説明した結果、自分で何とか使えるようになりました。

完成とは、機能が多いことではありません。

使う人が、目的を達成できることです。

AIを使えば誰でも簡単に完成品を作れるわけではありません。それでも、小さな困りごとを、まず動く形へするハードルは以前より下がりました。

そして、実際に使う人を見ながら、少しずつ改善できるようになったことは、大きな変化だと感じています。

※このツールは、日本株の現在株価などを簡単に確認するためのものです。株式投資の判断や売買を支援・推奨するものではなく、表示情報の正確性や即時性を保証するものでもありません。実際の売買判断は、証券会社などの正式な情報を確認したうえで、本人の責任で行ってください。

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